夜、ベッドに寝転びながら、私はスマホの画面をぼんやり眺めていた。

(……なんで、こんなに煉のことばっかり考えてるんだろ)

胸がきゅっと締めつけられる。
あんなに再会したくなかったはずなのに、今は――煉の言葉や表情が、頭から離れない。

「はぁ……」

ため息をついた瞬間、スマホが震えた。

――《今、寝たか?》

煉からのメッセージ。
私はしばらく見つめたまま、返信するか迷っていた。

(寝たって返せば、話終わるよね……)

でも、指は勝手に動いていた。

――《まだ。》

すぐに返ってきた。

――《そっか。声、聞きたい。電話、してもいい?》

一瞬、心臓が跳ねる。

(ダメ、って言えばいいのに……)

だけど気づいたら、通話のボタンを押していた。

「……美羽?」

「……なに?」

「いや、声聞きたくて」

「……ほんと、あんたって……ずるいよ」

静かな部屋に、煉の低い声が心地よく響く。
話すことはなくても、それだけで十分だった。