その日から、煉はまるで当然のように、私のそばに居続けた。

登校中、昇降口で待ち伏せされる。
授業の合間、私の教室に顔を出す。
昼休み、強引に席を取られる。
下校時には、無言で隣を歩かれる。

――まるで恋人みたいに。

(……ほんと、何考えてるんだろ)

周囲の視線がどんどん強くなっていくのが分かる。
ざわつく女子、警戒する男子。
その中心にいるのは、間違いなく私たちだった。

「ねぇ、美羽。黒津くんって、ほんとに昔からの知り合い?」

クラスの女子に聞かれた時、私はちょっとだけ戸惑った。

「……うん。幼馴染み、みたいなものかな」

「えー、うらやましい……!あんなイケメンと?」

「いや、そんな……」

戸惑う私の肩を、ひょいと煉が抱いてきた。

「何話してんだ?」

「ひっ……な、なんでもないよ!」

女子たちは赤くなって笑いながら離れていく。

私はというと、煉をにらみつけて、小さくつぶやいた。

「……やめてよ、そういうの」

「ん? なんで?」

「誤解されるって言ってんの!」

「誤解じゃないだろ」

「……っ!」

まただ。
また、私の心はこの人に――振り回されてる。