昼休み、しぶしぶと階段を上がって屋上のドアを開けると、煉はフェンスに背を預けて空を見上げていた。

「……なんでわざわざ屋上なの」

「人の目がうるせぇから」

「……そりゃ、あんな目立ち方してたらね」

煉は振り返ると、私をじっと見つめて言った。

「噂、気にしてんのか?」

「……気にするでしょ、そりゃ。クラス中から変な目で見られてるんだよ?」

「なら、ハッキリさせようか」

「え?」

「“俺の女”って、言ってやればいい?」

「……やめて、それはマジで無理」

冗談めかしたその一言に、顔が一気に熱くなった。
煉はふっと笑いながら、私の前まで歩いてくる。

「俺はさ、ちゃんと考えてんだよ。お前のこと」

「……ほんと、あんたって……」

「不安か?」

「……ちょっとだけ」

煉は無言で私の頭に手を乗せた。
その手は、あたたかくて、安心するのに――どこか、怖くもあった。

「じゃあ、不安じゃなくなるまで、毎日言ってやる」

「……なにを?」

「お前が好きだってこと」

目を見て、真っ直ぐに言うからずるい。
私の心は、またぐらつき始めていた。