暗闇の中で、私は息を潜めていた。
静かな病室。時計の針の音が、不気味なくらい響いていた。

「……また、だ」

震える手で、自分の胸元を押さえる。
目の前が歪んで、鼓動が乱れていく。
てんかんの発作。幼い頃から、私はこの持病と共に生きてきた。

普通に笑って、普通に恋して、普通に高校生活を送る──
それが、どれだけ難しいことか。
自分の「普通」が、誰かの「異常」になってしまうことを、私はもう何度も知っている。

「……大丈夫、大丈夫……薬、飲めば……」

震える声で自分に言い聞かせながら、私は一錠の薬を口に放り込む。
本当は、薬なんて嫌いだ。副作用で眠くなるし、気分も落ち込む。
でも飲まなきゃ、私は壊れてしまう。

 

──それでも、あの人に出会った日から。
私の世界は、少しずつ変わり始めたんだ。