悪魔の指輪、拾いました。


はいはい、精気ね。

「わかりました」


異常にすんなりと承諾した私に違和感をおぼえたのか、彼は左眉をぴくりと動かした。


「その指輪のすごさをまだ分かっていないようだが、さっきお前が事故から免れたのはその指輪のおかげだ。」

「事故から?」


ふとさっきの光景が脳裏をよぎる。
目の前に車が迫ってきて…避けようがなかった。
なのに、私が今無事なのはどうして…。


「まぁ、厳密に言えばその指輪が放った魔力で助かったんだ」

「魔力…?そんな力、私が持ってるワケ…」

「だからその指輪のおかげって言ってんだろ、バカか?お前が事故から助かったあと気を失ったのは、魔力を使う事によって一気に精気を指輪に吸い取られたからだ。」


まるでSF小説みたいな話。到底簡単に理解できるはずはない。だけど、彼の言っている事に全く筋が通ってないわけではない。あの時感じた無気力感と、目映い光。そして、何より今、私が生きているという事実。


「____あなた……何者、なの?」


暗く冷たい、そしてどこか憂いを帯びた瞳が私を捉えた。


「悪魔だ。」