悪魔の指輪、拾いました。



「……ん、」


目を覚ますと、そこはほんのり甘い香りが漂う薄暗い部屋だった。咄嗟に上体を起こそうとするも体は重く、まるで自分の体ではないかのように上手く動かすことが出来ない。


「目が覚めたか」


そう言い放ち、私の目の前に現れたのは恐らくあの時の声主だろう。電球に照らされたその男の顔は無駄に整っていた。背は、180cm位は余裕でありそうだ。
彼の私を見下ろす目は、物珍しいものを見る、そんな好奇心に溢れたもので、何をされるのか分からず不安と恐怖が私にのしかかる。


「気絶するとはな。まぁ、人間ごときの体力であんな魔力を一気に放出したんだからこうなるのは当たり前か」


魔力……?
厨二病なの?

そう思いつつも、あまりに真剣に話すものだから笑えない。

彼の発言に何も返事せず黙ったままでいると、それをよく思わなかったのか、私の目線に合わせるようにして、彼は私の目の前にしゃがみこんだ。


「お前、俺と契約を結べ。」


日本人とは思えない色素の薄い茶色の目。じっと見ていたら、吸い込まれそうだ。