悪魔の指輪、拾いました。



この道は車が1台通れればいいくらいの狭さで、街灯もなく真っ暗。人目も、人気も無い。だから運転手も私がいる事に気づいていないのだろう。スピードは緩むことなく、車は私の方へ迫ってくる。どうにかして避けなければと思うだけでどうにも出来ない私を車のライトが大きく覆い込んだ。


ーーーまだ、死ねないのに……!!!死にたくないのに!!!!
車に轢かれそうになる間際、咄嗟に脳裏に思い浮かんだのはたった一人の家族である弟の顔だった。その時、私には恐怖よりも何よりも、〝死ねない〟という思いが強く募った。その次の瞬間。




「……っ?!」


左手にはめていた指輪が、突如車のライトに勝るほどの目映い光を発した。その光に体が包まれたかと思うと、急に力が抜け、意識が遠くなり始めた。何が起こっているのか分からない状態の中、私は急に襲いかかってきた脱力感と無気力感に抗えず、ふっと意識を手放した。


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