私は安堵のため息と同時にその場に座り込むと、両手で素早く指輪を拾い上げ、もう落とさないように急いで左手の人差し指にはめた。
「……っ?!」
が、その瞬間。強い締め付けるような痛みが人差し指を襲った。初めての出来事に軽くパニックに陥った私は咄嗟に指輪を外そうと右手で指輪を強く引っ張った。
「………なんで、とれないの」
いつもなら多少取りづらくとも普通に外す事ができる指輪が、今日はどんなに力を込めても外れないのだ。それどころか外そうとすればするほど締め付ける力が強くなっている気がする。
「どうしよう、なんで、なんで」
「人間のものじゃないからだ」
突然背後から聞こえた凍てつくほど冷たい声に、私は思わず動きを止めた。こつこつ、と静かに歩み寄る靴の音に息を呑む。
後ろを振り向けば、この人に掴まってしまえば、もう生きて帰れない、そんな気がして。
【逃げなきゃ】
咄嗟にそう思った。私は震えている足を奮い立たせると力いっぱい地面を蹴った。とにかく、どこか明るい場所へ逃げ込まないと。
前に前に何とか足を動かし、人目につきそうな場所へと急ぐ。……と、そんな時、眩い光がブォーという大きなエンジン音と共にこちらにかなりのスピードで向かってきた。



