御曹司様はご乱心

◇◇◇『スーパー望月』のロッカールームにて、準備中のさくらを母が呼び出す◇◇◇

さくらの母「ねぇ、ちょっとさくら」

◇◇◇さくらとさくら母、ともに隣室の事務所を扉の隙間から伺う◇◇◇

◯応接用のソファーに二郎がふんぞり返っている。

二郎「ふんっ! この僕がここで働いてあ・げ・るって言ってるんだ。
   君たち庶民は土下座してありがたがるがいい。
   そして感涙しつつ僕を歓迎しなよ」

◯二郎につきそう黒服のSPの男性が、さくらの父二平身低頭に頭を下げる。

SP「望月さま、まずはこちらをご挨拶代わりに」

◯SP、さくらの父に高級菓子折りをてわたそうとするが

さくらの父「けっ……けっこうです」

◯さくらの父、青い顔して恐縮する。

さくら母「なんでもね、あの子、鳥羽建設のご子息らしいのよ」

◯さくら母、となりのさくらに耳打ちする。

さくら(やっぱり)

さくらモノローグ

なるほど顔立ちや雰囲気が、やっぱり鳥羽さんとよく似ている。
まわりに威圧感を与える物言いや、雰囲気のせいで誤解しちゃうんだけど、
多分あの子もそんなに悪い子じゃないような気がした。


さくらの母「なんだってそんな大企業の息子さんが、
      うちみたいなスーパーでアルバイトをしたいっていうんだろう」

◯さくら母、腑に落ちないと、しきりに首を捻っている。

さくら父「おい、君! これは遊びじゃないんだぞ!
     それは分かっているのか?」

◯さくら父、真剣な眼差しを、二郎に向ける。

二郎「当然だ。この僕を誰だと思っているんだ?」

◯二郎腕を組んで、あくまで上から目線。

さくら父「まずその態度だ」

◯さくら父の眉間に怒りの青筋が立っている。

さくら(マジで恐い)

◯さくら、父の雰囲気にビビる。

さくら父「年上に対してはきちんと警護を使いなさい。
     君のような態度は大変見苦しい」

◯厳しく言ったさくら父を、二郎が鼻で嗤う。

二郎「オジサン、時代錯誤も甚だしいね。
   そんな大昔の価値観を押し付けられても……」

さくら(だめだっ! 父が ブチ切れる)

◯さくら、ぎゅっと目を閉じるた瞬間、

パートの小林「ちょっと店長! さくらちゃんっ!
       レジの人手が足りないんですけどっ!」

◯パートの小林が入ってくる。


二郎「あっ!」

◯小林の顔と名札を見た二郎の時が止まる。

二郎「レディ、僕がお手伝いします」

◯二郎、恭しく小林の手を取る。

パートの小林「うん? あんた新入りかい?」

二郎「ええ、本日付けでこちらのスーパーでお世話になります、
   鳥羽二郎と申します。以後お見知りおきを、レディ」

◯二郎、うっとりと小林を見つめて、その手の甲に口付けた。

◇◇◇場面転換、場所は総一郎の実家である鳥羽邸。
   都内の一等地に居を構える、純和風の大邸宅◇◇◇

◯総一郎が、ポルシェのケイマンを乗り付ける。

執事「旦那様、総一郎様が到着されました」

◯執事が報告すると、庭でやたらと立派な盆栽の手入れをしていた総一郎の父が、
 厳しい眉をピクリと動かした。

◇◇◇