〇ホストクラブ・半個室・夜
ト書き:
蓮(レン)が、小春の席に座る。さっきまでの落ち着きはどこかへ消えている。
蓮「……悪かったな、待たせて」
小春「ううん、わたしこそ……でも、No.1の隼人さん、めっちゃ明るい人ですね」
蓮「……アイツ、営業スマイルの化け物だからな」
小春「でもなんか……さすがNo.1って感じで、余裕あるし……」
蓮「……」
ト書き:
グラスを満たす手がピタリと止まり、蓮がふと視線を外す。
蓮「……君、ああいう男が好きなのか?」
小春「えっ?」
蓮「軽くて、口が上手くて、華があって……“ちゃんとホストっぽい”やつ」
小春「ち、違います! わたしが好きなのは――」
蓮「“好き”?」
小春「……あっ、いや、えっと、そっちの“好き”じゃなくて……!」
ト書き:
気まずくなって目を伏せる小春。
蓮が苦笑して、静かにグラスを揺らす。
蓮「……そろそろ、“取材”やめたら?」
小春「え?」
蓮「……俺も、君も。これ以上は、“演技”じゃすまない」
小春「……」
〇大学・図書館・夜
ト書き:
人気のない閉館前の図書館。小春が静かに原稿用紙に向かっている。
小春(モノローグ)
(先輩の言葉、“演技じゃすまない”って、どういう意味だったんだろう)
(取材って、言い訳だった。会いたくて会いに行ってただけ)
(――これって)
ト書き:
短編小説の続きを書こうとして、ホストキャラの名前を書こうとする。
けれど、無意識に「蓮」と書いてしまう。
小春(モノローグ)
(……わたし、先輩が、好きなんだ)
ト書き:
椅子を勢いよく引いて立ち上がる。
小春「……もう、いっちゃえ! あたって砕けろっ!!」
〇大学・講義棟裏・放課後
ト書き:
翌日。木漏れ日の差す中庭。蓮が文庫本を読んでいる。
そこへ小春が走ってくる。
小春「先輩!」
蓮「……どうした?」
小春「わたし……伝えたいことがあって……!」
ト書き:
息を整えて、深呼吸。拳を握って前に出る。
小春「わたし、蓮先輩のこと、好きです!!」
蓮「……」
小春「最初は“取材対象”だったし、“地味だけど変な人だな”って思ってたけど……」
「ホストの顔も、作家の顔も、無理して笑ってる顔も……ずっと見てたら、止まらなくなって」
「“好きになっちゃダメ”って思ってたのに、止まらなかったんです!」
ト書き:
蓮が本を閉じて、小春をまっすぐ見つめる。
その瞳の奥に、一瞬だけ苦しげな色。
蓮「……ごめん。もし勘違いさせたなら謝る」
「ホストのときも、小説を書くときも、全部“演技”なんだ。まだ俺は……本当の自分がわかってない」
「君が好きになったのは、“俺”じゃないかもしれない」
ト書き:
そう言った蓮の口元に、どこか寂しげな笑みがにじむ。
小春「……っ」
ト書き:
言葉を失い、ただ立ち尽くす小春。
その手が、そっと握られたまま、ページのように風に揺れる。
TO BE CONTINUED…
ト書き:
蓮(レン)が、小春の席に座る。さっきまでの落ち着きはどこかへ消えている。
蓮「……悪かったな、待たせて」
小春「ううん、わたしこそ……でも、No.1の隼人さん、めっちゃ明るい人ですね」
蓮「……アイツ、営業スマイルの化け物だからな」
小春「でもなんか……さすがNo.1って感じで、余裕あるし……」
蓮「……」
ト書き:
グラスを満たす手がピタリと止まり、蓮がふと視線を外す。
蓮「……君、ああいう男が好きなのか?」
小春「えっ?」
蓮「軽くて、口が上手くて、華があって……“ちゃんとホストっぽい”やつ」
小春「ち、違います! わたしが好きなのは――」
蓮「“好き”?」
小春「……あっ、いや、えっと、そっちの“好き”じゃなくて……!」
ト書き:
気まずくなって目を伏せる小春。
蓮が苦笑して、静かにグラスを揺らす。
蓮「……そろそろ、“取材”やめたら?」
小春「え?」
蓮「……俺も、君も。これ以上は、“演技”じゃすまない」
小春「……」
〇大学・図書館・夜
ト書き:
人気のない閉館前の図書館。小春が静かに原稿用紙に向かっている。
小春(モノローグ)
(先輩の言葉、“演技じゃすまない”って、どういう意味だったんだろう)
(取材って、言い訳だった。会いたくて会いに行ってただけ)
(――これって)
ト書き:
短編小説の続きを書こうとして、ホストキャラの名前を書こうとする。
けれど、無意識に「蓮」と書いてしまう。
小春(モノローグ)
(……わたし、先輩が、好きなんだ)
ト書き:
椅子を勢いよく引いて立ち上がる。
小春「……もう、いっちゃえ! あたって砕けろっ!!」
〇大学・講義棟裏・放課後
ト書き:
翌日。木漏れ日の差す中庭。蓮が文庫本を読んでいる。
そこへ小春が走ってくる。
小春「先輩!」
蓮「……どうした?」
小春「わたし……伝えたいことがあって……!」
ト書き:
息を整えて、深呼吸。拳を握って前に出る。
小春「わたし、蓮先輩のこと、好きです!!」
蓮「……」
小春「最初は“取材対象”だったし、“地味だけど変な人だな”って思ってたけど……」
「ホストの顔も、作家の顔も、無理して笑ってる顔も……ずっと見てたら、止まらなくなって」
「“好きになっちゃダメ”って思ってたのに、止まらなかったんです!」
ト書き:
蓮が本を閉じて、小春をまっすぐ見つめる。
その瞳の奥に、一瞬だけ苦しげな色。
蓮「……ごめん。もし勘違いさせたなら謝る」
「ホストのときも、小説を書くときも、全部“演技”なんだ。まだ俺は……本当の自分がわかってない」
「君が好きになったのは、“俺”じゃないかもしれない」
ト書き:
そう言った蓮の口元に、どこか寂しげな笑みがにじむ。
小春「……っ」
ト書き:
言葉を失い、ただ立ち尽くす小春。
その手が、そっと握られたまま、ページのように風に揺れる。
TO BE CONTINUED…
