〇大学キャンパス・昼
講義を終えた学生たちが三々五々歩く中、背筋をピンと伸ばした女子がひとり、全速力で歩いてくる。
小春(モノローグ)
(落ち着け、落ち着け小春! あれは夢だったのかも……夢じゃなかった気もするけど……!)
ト書き:
昨日の夜の、ホスト街で微笑んでいた“蓮にそっくりな男”の姿がフラッシュバックする。
小春(モノローグ)
(でもあの笑顔……いつもの地味先輩とはまるで別人だった……)
(っていうか、あの“レン”って……蓮先輩のレン?)

〇図書館・午後
静かな空間。
蓮が読書している席に、小春が妙にそわそわしながら近づいてくる。
ト書き:
蓮は読書に没頭していて、小春に気づかない。
小春(モノローグ)
(確かめよう。正面から、堂々と!)
小春「せ、先輩!」
蓮「……?」
ト書き:
顔を上げた蓮の目元に、昨夜見た“レン”の影が確かにある。
小春はじっとその指に視線を落とす。
ト書き:
絆創膏。――昨日も見た場所と、同じ。
小春(モノローグ)
(……やっぱり、同一人物だ)
小春「昨日の夜……新宿の●丁目、通りました?」
蓮「……なんで?」
ト書き:
蓮の表情が一瞬、わずかに揺れる。
小春「……ホストやってますよね?」
蓮「……っ」
ト書き:
蓮、言葉を失い、少しだけ目を逸らす。
蓮「誰にも言わないでくれるなら、認めます」
小春「えっ、マジで!?」
蓮「“マジ”です」

〇図書館・窓際の席(場所を移して)
蓮と小春が向かい合って座っている。
蓮は淡々と、小春はド緊張で話す。
小春「えっえっと、どうしてホストなんて……?」
蓮「学費の足しと、母の入院費。――昼のバイトじゃ追いつかなくて。夜しか働ける時間がなかったからかな」
小春「……そんな理由が……」
蓮「君に見られたのは、想定外だったけどね。あの通り、通学路?」
小春「バイトの帰り道で、偶然……ほんとに偶然です!」
ト書き:
小春が必死に両手を振って弁解。蓮がふっと笑う。
蓮「君って、わりと正直なんだね」
小春「えっ……な、なんですか突然……」
蓮「それに、変に口外しないあたり、信用していいのかもしれない」
小春(モノローグ)
(……あ、これが、ギャップ萌えってやつか……!?)

〇カフェ・夕方
小春、1人でコーヒーを啜りながら、ノートを広げて落書き中。
小春(モノローグ)
(地味な先輩が、夜はホストって……どう考えても少女マンガじゃん!)
ト書き:
ノートには、つたない線画で描かれた「ホストレン」なるキャラクターと、「先輩、あなたの裏の顔が見たい…♡」というセリフ。
小春(モノローグ)
(……これは、書けるかも。恋愛短編、ホストネタで……)

〇図書館・夜
ト書き:
再び大学の図書館。蓮が静かに本棚から本を抜き、ふと机の上に落ちた紙片に気づく。
ト書き:
小春の名前が書かれた文芸部のプリントに、走り書きされたストーリーの冒頭。
「ホストさまに恋をしました――彼は昼、隣の席の先輩でした。」
蓮(モノローグ)
(……これ、俺?)

TO BE CONTINUED…