〇大学・図書館・夕方
ト書き:
蓮がノートPCに向かって、静かにキーボードを打っている。
横では小春がノートに“取材メモ”を書いている。
小春「ねえ先輩、今書いてるやつって、恋愛もの?」
蓮「……まあ。モデルにしてるやつは、いるけどな」
小春「ふふっ、じゃあ私もまた“ホスト小説”書こうかなあ~。
“レン”って名前の超絶イケメンがいて、すっごく不器用なんだけど、ひとりの子にだけめちゃ甘なんです」
蓮「……それ、俺のことだよな?」
小春「さて、どうでしょう?」

〇ホストクラブ・夜・ラスト営業前
ト書き:
煌びやかな照明のもと、ステージ中央に立つ蓮。
スーツに身を包み、堂々たるNo.1ホストとして、クラブの空気を引き締めている。
ホスト仲間A「お前、マジで店の看板だよなあ。
でも噂じゃ、そろそろ作家一本で行くって?」
蓮「さあ、どうだろうな。……どっちも俺だよ」

〇ホストクラブ・同日・半個室
ト書き:
蓮が静かにカーテンを開ける。
そこには、白いワンピース姿の小春。
蓮「……待たせた」
小春「“No.1ホストのお姫様”になる日が来るなんて、思ってませんでした」
蓮「俺にとって、君が来てくれることの方が、よっぽど奇跡だよ」
ト書き:
テーブルの下で、蓮が小春の手をそっと握る。
小春「……これ、ホストの“演技”ですか?」
蓮「ちがう。“彼氏”としてのサービス」

〇大学・講義棟前・後日・昼
ト書き:
地味な眼鏡姿で、本を読みながら歩く蓮。
すれ違う学生たちは、彼が“夜の顔”を持つとは誰も気づかない。
小春(モノローグ)
(彼は地味で、無口で、不器用で――)
(でも、夜には誰よりもまぶしくて、優しくて)
(その全部が、私の“彼氏”なんです)

〇大学・中庭・ベンチ
ト書き:
ベンチに並んで座るふたり。
小春が原稿を広げ、蓮が横から静かに見守る。
蓮「なあ、小春。今度の作品、タイトル決まったか?」
小春「うん。決めた」
蓮「教えてくれる?」
小春「……『地味カレ、夜はホストさま!? ~この恋、背負い投げで一本勝ち~』」
蓮「……バレるだろ、それ」
小春「いいの。わたしの“好き”を全部詰めた、物語だから」
ト書き:
蓮が照れくさそうに笑って、小春の頭に手を置く。
蓮「じゃあ、俺の次の作品はこうしよう」
「“恋と夢、君とふたりで二面性”。……ちょっと地味すぎるか?」
小春「いいえ。“先輩らしさ”、ちゃんと伝わってます」
蓮「それなら……今度、一緒に書いてみるか? “ふたりで描く恋”ってやつ」
小春「……えっ、ほんとに? それ、やりたいです!!」
蓮「俺も。君の視点、好きだから」

〇中庭の桜並木・少し後
ト書き:
歩きながら、ふたりで原稿の話をし続けている。
手には、互いのノートが1冊ずつ――交換するように持っている。
小春(モノローグ)
(夢を追う背中に、いつか並びたいと思ってた)
(でも、いまは――隣で、一緒に夢を描きたい)

END