バーテンダーズ - Dance with Cocktails -

(まだ、ぼーっとしてる……)
俺はクラクラする頭を一度振って、
「いただきます」
そう言って、グラスを持って口をつける。
「美味しい!」

お酒とは思えないくらい、するり、と喉を通った。
フレッシュなオレンジジュースの甘さと酸味が心地好い。
あとからシャンパンのフルーティでさわやかな香気が立った。

「本当にきれいな動きですね。俺、見とれちゃいました」
俺が興奮気味にそう言うと、エルさんがぽっと頬を赤らめ、
「ありがとうございます」
そう言ってほほ笑む。今つぼみが開いたばかりの赤いバラのような笑顔だった。

「本当に素晴らしいものを見せていただきました」
俺がニコニコしながらそう言うと、
プリンを食べていた松本さんが、ニヤッと笑う。
「いやいや、谷崎さん。
これはまだ序盤だよ」
「そうそう、序盤、序盤!
ジョバンニとカムパネルラ!」

「えっ? 序盤?」
松本さんも村上さんも俺を見てニヤニヤ笑っている。
俺がエルさんを見ると、エルさんは困ったように、あいまいに笑っていたが、
その笑顔も花のようにきれいだった。