亘と知り合ったのは高校を卒業して間も無くで、付き合って今年で7年目だった。

元サッカー部だった亘は爽やかで、とにかく用意周到で、わたしにとって完璧な王子様だった。

亘は、とても、キスがうまかった。

数分前のスターバックスの中はほろ苦い珈琲の香りが立ち込めていて、ひどく気が滅入った。

真央のことを騙すつもりはなかったのよ、そう環奈は言って、涙声で続けた。

「亘と付き合って、もう3年になるわ。ごめんなさいね。でも、私だって我慢してきたのよ。ずっと、彼が欲しくてたまらなかったわ」

彼女というポジションで幸せそうにしている真央が羨ましかった、そう言って泣く環奈を置いて、わたしはスターバックスを飛び出した。

今頃、飲み掛けにして来たエスプレッソが、生温くなっているだろう。

わたしの知らないところでもう一つの愛を、二人は三年間という歳月、育んできたのだ。

悔しくて、悲しくて、憎たらしくて、わたしは泣きながら歩き続けた。

今日はクリスマスイヴだ。

亘とデートの約束をしていた。

待ち合わせ場所は駅前のスターバックスで、わたしはうきうきしながら彼を待っていたのに、そこに現れたのは環奈だった。

「私、年明け早々に結婚することになったの……亘と」