「ありがとう。誉めてもらえて、光栄だよ」

隼は言い、微笑んだ。

わたしは何も返事をしなかった。

三年前は学ランをはだけさせて、だらしなく着こなしていたのに。

元々スレンダーな体型が見違えるほど、大人びたラインになっていて、縦のストライプ柄の紺色のスーツが、ひどく似合いすぎていた。

ただ、森林のような香りと、エメラルドグリーンの瞳は何も変わっていなかった。

三年経った今、彼はますます、オーランド・ブルームによく似ていた。

特に、通った鼻筋と、あごのシャープなラインが。

わたしは口をあんぐり開けて、彼を見つめ続けた。

隼は、くくっと笑った。

「そんなに驚かないで。どっちにしろ、また、こうして出逢う運命だったのだから」

「わたしは、もう、逢えないと思っていたわ」

「真央さん、ますます美人になったね」

そう言って、隼は目尻に皺をつくって微笑んだ。

白く清潔感漂うワイシャツに、濃い青色のネクタイが、よく似合っていた。

わたしは泣きたいのを我慢して、クスクス、声を出して笑った。

「やめてちょうだい。心にもないこと、言わないで。相変わらず、お世辞がうまいのね」

「心外だな。心にあるから、言ったのに」

「本当にやめて。わたし、もう二十八になったのよ。あと二年で三十よ。おばさんだわ」

あれから、三年という長い歳月が過ぎ去ったのだから、仕方のないことだ。