ほっ、と胸を撫でおろしているわたしは、達の悪い悪魔かもしれない。

環奈には悪いが、その被害にあわなくて良かった、なんて。

二十六のクリスマスイヴ以来、二人には会っていない。

でも、いつか、再会したら、笑って話したい、とわたしは小さく願っている。

周りの同僚や同級生達は、ほとんどが所帯を持ち、幸せな人生を送っている。

でも、あれからずっと、わたしは恋人もつくらず独り身だ。

理由は、不治の病にかかって、慢性化しているからだ。

病名は、恋煩い。

病原菌は、渡瀬隼。

恋煩い患者のわたしは、今も同じ会社でしがないOLを続けている。

変わった事といえば、少しアルコールに強くなった事、と、ずっと伸ばしていた髪の毛をばっさり切った事、くらいだ。

他は何も変わっていない。

あれから三年間、クリスマスイヴになると、わたしは定時で仕事を切り上げ、駅前のクリスマスツリーの下で約六時間を過ごしていた。

でも、もう、それも今年で最後にしようと思っているのだ。

今年も、待ち人は現れないのだろう。

そして、これから先も、ずっと。

あれから三年経って、駅前の風景は少し変わった。

ファッションビルが二件増え、カフェやファーストフード店が増えた。

若者向けの街並みに変わった。

来年の春には、また一つ、この駅前に二十階建てのビルが建つらしい。

クリスマスなど関係無く、建設業者の作業員達が汗水を流していた。

でも、このクリスマスツリーだけは、何も変わらない。