戻ってきて、ミラノには行かないで。

わたしは何度も心の中で祈り願ったのに、隼が戻って来ることは無かったし、翌日、隼は本当にイタリアのミラノへ発ったのだと思う。

霧の街、へ。

二十五歳のクリスマスイヴに、わたしは新しい恋心を抱いた。

愛を失い、しかし、すでに恋煩いにかかってしまったのだ。

わたしは一人、公園に立ち尽くしていた。

気が付くと日付が変わる時刻に、あと十分になっていた。

淡雪は夜更け過ぎに、つめたい雨をふくんだ重い雪に変わっていた。