駅前のスターバックスでカフェオレを目の前にして、環奈が泣いていたのはほんの数分前のことだ。

本当に泣きたいのは、わたしだったのだ。

環奈は高校からいつも一緒にいた、わたしの大切な親友だった。

彼女は小柄で華奢で、栗色の長い髪の毛をくるくる巻いていた。

気の強いわたしとは違って、おっとりとした気品のある子だ。

環奈は若者に人気のジュエリーショップの店員で、看板娘だ。

ベビードールという香水がとても良く似合う、女の子の鏡だ。

わたしの婚約者の亘の子供を、環奈は授かった。

覚束無い足取りで歩きながら、わたしは泣き続けた。

クリスマスイヴの街中を泣きながら歩くのは、ひどく惨めだった。

でも、恥ずかしくはなかった。

泣きやむ方法を、すっかり忘れていた。

亘と婚約をしたのは、今年の夏のことだった。

地元で一番有名で盛大な花火大会がフィナーレを迎えた頃、亘がプロポーズしてくれた。

夜空に咲く花はどれもこれも幻想的で、美しかった。

「真央、おれと結婚してくれないか」

飾り付けの無いシンプルなものだったけれど、わたしは嬉しくてたまらなかった。

わたしは亘を大好きだったのだ。

勿論、二つ返事で即答した。

亘は背が高く、中古車ディーラーの営業マンで、スーツがとても良く似合う同い年の好青年だ。