わたしは、亘を、好きだった。

同時に、環奈のことも。

三人はどうしてこんなことになってしまったのだろう。

婚約指輪を外すために繋いでいた手をほどき、わたしは言った。

「これ、外すことにするわ。もう、わたしには必要無い物だもの」

「そこまで無理をする必要はないよ」

隼がすっとんきょうな声で言って触れたそれは、皮肉にも美しい光を放っていた。

九号の、婚約指輪。

純銀色で、あわよくば純白色にも見間違えてしまうほど、美しい輝きを放っていた。

「真央さんは、子供みたいな二十五歳だ」

「心外だわ。でも、そうなのかもしれない」

「思い通りにいかなくて、裏腹な行動に出る子供のような人だ」

「ますます心外だわ」

とわたしは言い、でも、心の底から納得していた。

年下の男に馬鹿にされたのに、わたしは頭にこなかった。

婚約指輪を外そうとして手をかけたのに、いざ外すとなると、わたしはひどく憂鬱になった。

凄まじく、困惑した。

亘の左手の薬指にもサイズ違いの、まったく同じデザインのものがあるだろう。

いや、もう外されているかもしれない。

「三ヶ月分の給料と夏のボーナスを合わせて、奮発したんだ」

そう言って、亘は嬉しそうにわたしの薬指に、これ、をはめてくれた。

わたしの父も母も、亘のご両親も喜んでくれたし、何よりも環奈が一番喜んでくれたのに。