「今の……歌ってたの、星菜ちゃん?」

玲那ちゃんは、まっすぐな目で私を見ていた。

私はうなずくことも、首を振ることもできなかった。

「すっごく、きれいな声だったよ」

その言葉が、胸の奥にふわっと染みこんできた。

誰かに歌を聴かれたのは、たぶんこれがはじめてだった。

なのに、怖くなかった。

むしろ、

あのとき聞こえた「きれい」って言葉が、
夕焼けよりもずっとまぶしく感じた。