ピアノの前に座って、何度も鍵盤をたたいた。

明るすぎても違う。
暗すぎても、違う。

星菜ちゃんの歌詞は、静かに熱くて、
一歩踏み出そうとする“光”みたいだった。

——あの日の屋上の風。

——夕暮れの空。

——ふたりの声が重なった瞬間。

その景色を思い出して、指が自然に動いた。

右手のメロディ。左手のコード。
まだ完璧じゃないけど、確かにそこに“何か”があった。

「……これだ」

私の胸が、音と一緒に高鳴ってた。