「……やっぱり、だめかも」

小さくつぶやいた声が、風にかき消された。

夕焼けの屋上。

もう一度、歌ってみようと思ったのに、
声が、出なくなってしまった。

昨日よりは出た気がしてたのに。

玲那ちゃんが「聞かせて」って言ってくれたのに。

それでも、どうしてもこわかった。

歌うことで、なにか大切なものが
はっきりしてしまいそうで——