「待って!」

思わず、大きな声が出た。

星菜ちゃんが足を止める。

息を整える間もなく、私はその背中に向かって言った。

「あのね……もう一度だけ、聞かせてほしいの」

「あの歌、すごく好きだったから」

夕焼けの風が、ふたりの間をすり抜ける。

星菜ちゃんは、ゆっくり振り返って、

そして、小さく——

こくん、と、うなずいた。