木野島君の問いには答えず私達に近づいた渚君は、夏波ちゃんの頭を撫でた。
夏波ちゃんは嬉しそうに笑う。
そっか渚君には夏波ちゃんがいるんだもんね。そりゃあ分かるか。
「気丈な女や。目の前に死神が現れても首を垂れるなんて絶対にせえへんやろう。そやさかい妃帥には文句はあれへんけど…俺は兄貴に文句がある」
「も、文句?」
不快そうに渚君は木野島君の問いに今度は答えた。
「せや。妹が必死に行き足掻いてるんやったら、ドンと構えて安心しろ傍に付いとったるって言うんが兄貴やろう。なのにあのアホンダラと来たら…なあつづちゃん」
やっぱり渚君はブレないし安定している。
それは夏波ちゃんがいるから、同じくらい想ってくれているって言うのが分かってくれているからなんだよね。
いつかあの双子もコレぐらい強く在れればいいのに。
そう願いながら、渚君の強い眼差しに押されて口を開いた。
「木野島君。初めに言ったけど、」
ビクンと揺れる木野島君に、まだ私に怯えているのか。
「言ったでしょう。これから私は殴りに行ってくるの、」
私はにっこりと笑って言った。
「獅帥君を」



