過つは彼の性、許すは我の心 弐



「しかも鉄将君って言う獅帥君の護衛役が居た癖に、たかだか女1人にやられたってね」


 木野島君と一緒に火渡君の傍にいた鉄将君はえ?と言う顔になっているが、もう知るか。


「はあ…」


 さてこんな暴挙して教えてくれって言っても、もう絶対に教えてくれないだろうし、取り敢えず天條邸に言ってみて…そうだなあ事情通な四葉さんあたりに聞いてみるか。

 そう頭で算段を付けていれば、


「いやあ綴最高、マジ最高」


 パン…パン…と一定間隔に拍手しながら私の元へ来る。


「凌久君?」


 何で此処に?

 黒のズボンと白いTシャツ、上から黒のオーバーサイズのシャツを羽織っていて、シンプルながらもカッコイイ仕上がりの彼は口を尖らせた。


「釣れへん事言わんといて。俺妃帥のシンカン」


 そうだ妃帥ちゃんのシンカンになったから連絡言ってても可笑しくないのか。


「そっか。でも妃帥ちゃんまだ目が覚めてなくって…」


 それに、結構危ない状況なんだよね。


 少しだけ顔を伏せた私に「つーづ」と何故だか明るく声を掛ける。

 顔を上げる様に促されている気がして顔を上げると、私を見下ろす瞼から覗く瞳は、雲からお月様が覗いている様に見えて、場違いにも美しいと思った。

 凌久君は、


「俺が妃帥の為だけに来た思うか?」

「え?」


 と言って、悪戯気に笑った。