過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 わらわらと私を押しのける様に、看護師が妃帥ちゃんを取り囲む。


「酸素つけますからね。天條さん聞こえますかー?」

「サチュレーションが下がってる」

「外したからじゃなくって?」

「それにしても上がりが悪い、先生量上げますね」


 妃帥ちゃんの付いているモニターのアラームが鳴っており、慌ただしく看護師の声が飛び交う。

 圭三郎さんも妃帥ちゃんに聴診器を当てながら「妃帥さんちょっと失礼しますね…念の為呼吸器準備してもらっていいですか」と看護師に指示を出す。

 私はーーー居ても居られなくなった。


「分かりました、ちょっと貴方!」


 一瞬だけごめんなさい!と謝って周囲を押し退ける。

 妃帥ちゃんの手を握って、


「妃帥ちゃん!約束する、獅帥君と一緒にここに戻って来るから待ってて!」


 次起きた時は2人で待っているから!


 そんな思いと共に、目を閉じている妃帥ちゃんに大きな声で伝える。

 すると妃帥ちゃんの瞳が開かれて、ふっと微笑んだ気がした。

 妃帥ちゃん…!


「先生後お願いします!」

「綴様!」


 名残惜し気に手を離して、出入口に向かって走る。


「走らないで下さい!」

「すみません!」


 看護師を避けながら、強い決意と共に病棟を飛び出した。

 絶対に次は2人で戻ると誓って。