わらわらと私を押しのける様に、看護師が妃帥ちゃんを取り囲む。
「酸素つけますからね。天條さん聞こえますかー?」
「サチュレーションが下がってる」
「外したからじゃなくって?」
「それにしても上がりが悪い、先生量上げますね」
妃帥ちゃんの付いているモニターのアラームが鳴っており、慌ただしく看護師の声が飛び交う。
圭三郎さんも妃帥ちゃんに聴診器を当てながら「妃帥さんちょっと失礼しますね…念の為呼吸器準備してもらっていいですか」と看護師に指示を出す。
私はーーー居ても居られなくなった。
「分かりました、ちょっと貴方!」
一瞬だけごめんなさい!と謝って周囲を押し退ける。
妃帥ちゃんの手を握って、
「妃帥ちゃん!約束する、獅帥君と一緒にここに戻って来るから待ってて!」
次起きた時は2人で待っているから!
そんな思いと共に、目を閉じている妃帥ちゃんに大きな声で伝える。
すると妃帥ちゃんの瞳が開かれて、ふっと微笑んだ気がした。
妃帥ちゃん…!
「先生後お願いします!」
「綴様!」
名残惜し気に手を離して、出入口に向かって走る。
「走らないで下さい!」
「すみません!」
看護師を避けながら、強い決意と共に病棟を飛び出した。
絶対に次は2人で戻ると誓って。



