『兎に角下手に関わるな。上に言われた通りやっとけばいい』
『…それでいいんですか?』
『この業界で…いや人生長生きしてえだろう。なら見ざる言わざる聞かざるだ』
正直に言えばもっと聞きたかったんだけれど、それ以上は彼等の言う上の人等と合流したせいで、途中までしか聞けなかった。
「もう…昼前か」
窓の外を見れば、既に日は昇っていて、小鳥が木々に止まっているのが見える。
既にドレスを脱いで一休みを終えた私は、昨日を振り返りながら溜息を吐いた。
憂鬱だ…。
さっきの警察の会話ぐらいじゃ驚く事もないけれど、憂鬱な理由はもう1つある。
それは2つ目の気になる事に関わっていて。
ふうと息を吐いて、ドアをノックする。
ドアの向こうから声がかかり、カチャリと開けた。
「…どう?」
振り返った獅帥君は、椅子に座りながら首を振る。
着ていたジャゲットを脱ぎ、襟を緩めた獅帥君は、少しの疲労と憂鬱感を滲ませ、何処か艶めいて見えた。
きっとこんな状況じゃなければ、乙女心に火が付きそうだけれど、
「妃帥ちゃん…」
傍に眠っている妃帥ちゃんの具合が悪くなければの話だ。
あの後笑いながら大きく咳き込み始めた妃帥ちゃん。
その内本当にグッタリし始め、声を掛けても、揺すっても、反応が見られなくなり、私が大発狂。



