過つは彼の性、許すは我の心 弐

 

 少し前まではパジャマパーティーして、あんなに笑い合っていたのに。

 どうしてこんな。

 そんな思いがぐるぐるして、感情的に涙が溢れそうなのをグッと堪える。


「おね…がい」


 そうだ私は妃帥ちゃんが何を伝えたいのか確認しに来たんだ。


「うん聞こえているよ」


 夢現なら聞こえているか分からないだろうから、痛くならない程度に手をギュッと握る。

 すると妃帥ちゃんは目を見開き、あろう事か、


「妃帥ちゃん駄目だよマスク取っちゃっ」


 酸素マスクを外してしまった。


「付けないと妃帥ちゃんが苦しくな、」


 なるよと言い掛けて、妃帥ちゃんの瞳がジッと見つめているのに気付く。

 その目はまるで大人しく聞けと言われているみたいで、妃帥ちゃんの暴挙を止める手が静止する。

 妃帥ちゃんの手が私の襟首を掴んだ。


「妃帥ちゃ、ん」

「おねが、」


 白い枝の様に細い手が、かなり力を入れているのか力み過ぎて震えている。

 看護師が慌てた様子で近付くのを尻目に、妃帥ちゃんは言った。

 強く意志の籠もっている。

 いや、露命をつなぐ様な、


「獅帥の傍に、居て。1人に、しないで…っ」


ーーー儚くも悲しい言葉がハッキリと私に届いた。


 その言葉に目を大きく見開く。

 私の言葉を待たずして、妃帥ちゃんの身体が後ろに倒れた。