過つは彼の性、許すは我の心 弐



「何かありましたか?」

 
 圭三郎さんの問いに、カズミさんの視線が私に向けられる。え何何。


「妃帥様が綴様をお呼びしています」

「っ…妃帥ちゃんが?」


 お兄ちゃんではなく私?どうして。


「もう目覚められたのですか?」


 圭三郎さんも流石に手術を終えたばっかりだったから、とても驚いた様にカズミさんに聞く。


 そうそう…終えたばかりなら麻酔も抜け切っていないんじゃ。


 カズミさんは、


「いえ譫言で綴様のお名前を呼ばれていて…何か伝えたい事がある様なんです」


 私を意味ありげに見ながら答える。

 妃帥ちゃんが倒れる前にそう言えば…と思い出す。


『違う、私じゃな、』


 私に何かを伝え様としていた。


「家族や親戚以外は面会出来ない決まりなんですが…妃帥様のお望みならばいいでしょう。私の方から話を通しておきます」


 圭三郎さんは足早にICUに入って行き、カズミさんが私に来る様に視線で促す。


「埜々ちゃん。ちょっと行ってくるね」

「はい行ってらっしゃいませ」


 埜々ちゃんはジッと鉄将君を、睨みはしないものの冷ややかな目で縫い止めている。

 精々埜々ちゃんにお灸を据えられるが良いわ。

 へっ!と言う気持ちで、カズミさん達の後に続く。

 入った先で手洗いをしっかりと行い、もう1つあった扉を抜ける。

 初めてICUって入るかも。