「何かありましたか?」
圭三郎さんの問いに、カズミさんの視線が私に向けられる。え何何。
「妃帥様が綴様をお呼びしています」
「っ…妃帥ちゃんが?」
お兄ちゃんではなく私?どうして。
「もう目覚められたのですか?」
圭三郎さんも流石に手術を終えたばっかりだったから、とても驚いた様にカズミさんに聞く。
そうそう…終えたばかりなら麻酔も抜け切っていないんじゃ。
カズミさんは、
「いえ譫言で綴様のお名前を呼ばれていて…何か伝えたい事がある様なんです」
私を意味ありげに見ながら答える。
妃帥ちゃんが倒れる前にそう言えば…と思い出す。
『違う、私じゃな、』
私に何かを伝え様としていた。
「家族や親戚以外は面会出来ない決まりなんですが…妃帥様のお望みならばいいでしょう。私の方から話を通しておきます」
圭三郎さんは足早にICUに入って行き、カズミさんが私に来る様に視線で促す。
「埜々ちゃん。ちょっと行ってくるね」
「はい行ってらっしゃいませ」
埜々ちゃんはジッと鉄将君を、睨みはしないものの冷ややかな目で縫い止めている。
精々埜々ちゃんにお灸を据えられるが良いわ。
へっ!と言う気持ちで、カズミさん達の後に続く。
入った先で手洗いをしっかりと行い、もう1つあった扉を抜ける。
初めてICUって入るかも。



