過つは彼の性、許すは我の心 弐



 それともあの時、


『教えてくれ綴』


 私が何かを言えば変わったのか。


「…オオミカにこんな事を言うのは失礼なのですが、」


 え?と視線を上げれば、埜々ちゃんがコーヒーの湯面を見ながら語り始めた。


「獅帥様と初めてお会いした時、お美しい方だと思ったと同時に、悲しい方だとも思いました」

「…」

「いつも表情1つ変えずにすべき事を熟し、周囲の期待に応える。あの人が心を配るのは妹だけ」

「…」

「いいえ、違いますよね。心を配 れる(・・)のが、妃帥様だけなのでしょう。それがどんなに悲しいことなのか、あの方にも、慣れきっていて麻痺している私達にも分かっていない」


 そう。

 でも、私はそんなの、
 

「でも、」


 言葉をゆっくり切って、私を見つめる。

 大きく黒目がちな瞳は、吸い込まれそうな程美しく、


「綴ちゃんはそれじゃあ嫌ですよね」

「…っ」
 

 優しさを湛えて、私の思いを汲み取ろうとしてくれた。

 出会った時もそうだった。

 相手をじっくり見つめて、正しくその人がどんな人かを理解しようとしてくれる。

 人って自分を理解して欲しいって気持ちが先行する事が多いと思うんだけれど、埜々ちゃんの場合はどんな時でも相手の事を理解しようとする…心の器が大きいんだろうなあ。


「私、嫌なんだ」

「はい」

「何か皆が色んな事に仕方ないってなっているの」