過つは彼の性、許すは我の心 弐



「少し話が逸れちゃったんですけれど」


 埜々ちゃんはコーヒーを飲んで息を吐く。


「時々発作的に居なくなられるみたいで…妃帥様の体調が直ぐれている時は妃帥様が検討つけて下さって、シンカンが迎えに行くのですが…」


 少しだけ躊躇い「ただ、」と埜々ちゃんが重々しく言葉を続けた。


「屋敷の使用人の話だと、天ヶ衣さんと一緒に居なくなられたとかで…」

「…は」


 天ヶ衣さん…?あの?


『君さどっかで会った事ない?もっと一緒にいれば思い出しそうなんだけどなあ…この後どう?』

『繁華街でアイツと一緒に歩いていたっしょ。キエイ君と』

『キエイなんかと連んでいたなんて…案外綴ちゃんって遊んでいる感じ?』


 それって。


「良い事ではないんですよね。だからシンカンの方々が血眼になって探しています」

「…事情は、分かった」


 事情は分かったけれど、余計に何やってんだって気持ちだ。

 唯でさえ妃帥ちゃんがあんな状況なのに、こう言う時に居なくてどうする。

 隈をつくって悲壮感漂わせていたのは何処のどいつよ。

 見ているのが辛かったんだとして、よりにもよって天ヶ衣さんと一緒に何で居なくなる?

 私が勝手に悪感情持っているだけかもしんないと思ったけれど、他の人も天ヶ衣さんの事を良く思ってなさそうなのを見るに、やっぱり良い人ではないんだろう。