「少し話が逸れちゃったんですけれど」
埜々ちゃんはコーヒーを飲んで息を吐く。
「時々発作的に居なくなられるみたいで…妃帥様の体調が直ぐれている時は妃帥様が検討つけて下さって、シンカンが迎えに行くのですが…」
少しだけ躊躇い「ただ、」と埜々ちゃんが重々しく言葉を続けた。
「屋敷の使用人の話だと、天ヶ衣さんと一緒に居なくなられたとかで…」
「…は」
天ヶ衣さん…?あの?
『君さどっかで会った事ない?もっと一緒にいれば思い出しそうなんだけどなあ…この後どう?』
『繁華街でアイツと一緒に歩いていたっしょ。キエイ君と』
『キエイなんかと連んでいたなんて…案外綴ちゃんって遊んでいる感じ?』
それって。
「良い事ではないんですよね。だからシンカンの方々が血眼になって探しています」
「…事情は、分かった」
事情は分かったけれど、余計に何やってんだって気持ちだ。
唯でさえ妃帥ちゃんがあんな状況なのに、こう言う時に居なくてどうする。
隈をつくって悲壮感漂わせていたのは何処のどいつよ。
見ているのが辛かったんだとして、よりにもよって天ヶ衣さんと一緒に何で居なくなる?
私が勝手に悪感情持っているだけかもしんないと思ったけれど、他の人も天ヶ衣さんの事を良く思ってなさそうなのを見るに、やっぱり良い人ではないんだろう。



