そもそも今回の事は事件性が無いとされた。


 女はーーー自殺だった。

 
 そう判断されたのは、上階の室内で遺書が見つかったから。

 後から来たその天條とも関わりのある警察官から、遺書があった事と、その内容を知らされた。

 詳細までは教えて貰えなかったが、


【オオミカ様に無礼を働いたため、死を持って償います】

 
 と文末に書き添えられていた様で、獅帥君が先程女と私の間に合った事を説明してくれた。


 遺書の内容に少し思う()があったが、疑いは晴れた事には内心ホッとする。

 ただ、気になる事が2つ。


『またか…。今回の事もオオミカ様が関わっているらしい』

『今回の事()?』

『先代に当代…恐ろしい家だ』


 お花摘みにと廊下を歩いていたら、そんな年嵩の刑事と若い警官の会話が聞こえた。

 先代に当代?って事は妃帥ちゃん達からすれば、先代は祖父で、父親の匡獅さんが当代って事?

 その世代の時にも何かしらがあったって事なのか。

 耳をそっとそばだてる。


『今回の件は関係ないんじゃないんですか?』

『馬鹿。ここでの自殺者なんて、天條側に都合が悪くなった人間の事だ。今回の事だって…あり得るんだぞ』

『え、まるで天條が命令したから、』

『おい』


 小突く様なドスっと言う音が聞こえた後に『すみません』と若い警官の声が聞こえた。