「ーーー獅帥様が居なくなりました」
「ぶっ」
サンドイッチの射出は防ぐが咽せてしまい、慌てていい感じに温くなったコーヒーを流し込む。
「ごめんなさいビックリさせちゃって…」
「う、ん大丈夫。ありがとう」
渡されそうになったハンカチを手で制止した後、咳払いして呼吸を整えた。
「え、と居なくなった?」
「はい鉄将君からはそう聞いています。誰にも行方を告げず出て行かれたみたいで…落ち着いて話せそうに無いから私から言って欲しいと言われたんですけれど」
結局驚かせてしまいましたねと、苦笑いする埜々ちゃん。いやいや私が勝手に驚いただけだし、て言うか。
「着替えてから直ぐに居なくなったの?」
「そうみたいです。鉄将君がお屋敷の方に見に行ったら、いらっしゃらなかったと」
「そう、なんだ…」
妃帥ちゃんの事がそれだけショックだったのか。
やり切れない様な顔をしていた獅帥君の顔が思い浮かぶ。
しかし埜々ちゃんは「…獅帥様が行方を晦ます事はよくあるんです」と続けた。
「よくあるの?」
短い付き合いだから知らなかったけれど、そうだっんだ…でもこんな妹が手術を受けているタイミングで?
埜々ちゃんは頷いて「時々発作的に居なくなられる事があるみたいで…シンカンでも護衛役の鉄将君は、その度に駆り出されて大変だとよく話されています」と。



