「綴ちゃん服、よく似合ってますよ」
「埜々ちゃんが選んでくれたからだよ」
「ふふ、良かった」
机に両肘を突きながら両手に顎を乗せて、私がコーヒーを飲む所をニコニコと見守る埜々ちゃんに、入院患者さんや外来にいた人達の視線は釘付けだ。
確かに今の埜々ちゃんを見たら、元気が無い人達も活力が戻りそうな可愛らしさがある。
ここは病院にある某有名コーヒーチェーン店で、普段は入院患者さんやその家族、職員が憩いの場所として訪れる所なんだけれど…。
「何かの撮影?」
「あの女優さん名前なんて言うんだろう」
「でもカメラマンとかスタッフ居なく無い?」
「じゃあお忍び?」
「僕サイン貰って来る!」
「こら駄目でしょう!」
これは前に見た事がある、アレだ。
寮で獅帥君といた時に起きたドーナツ化現象。
獅帥君の代わりに、小動物の様な可愛いらしさを持つ美少女埜々ちゃんをメインに再現されていた。
「落ち着きましたか?」
「うん」
周囲は若干落ち着かないけれど、この数日間かなり緊張を強いられる事が多かったせいで、埜々ちゃんの優しさは普通に心に沁み入る。
機嫌良くコーヒーと一緒に頼んだサンドイッチを頬張る。
「美味しい〜」
ウマウマと食べている私に、
「綴ちゃん、落ち着いた所で申し訳ありませんが」
「ん?」
変わらず微笑んでいるんだけれど、何処か改まった感じの埜々ちゃん。



