ふう…と息を吐いて、目の前のコーヒーを飲む。
少し落ち着いたかも。
「ありがとう埜々ちゃん」
「いえいえ」
ほほ…と穏やかに微笑む埜々ちゃんの優しさに、荒ぶった感情が凪いでいくのを感じる。
埜々ちゃんは私をトイレまで連れて行き、両上肢に付いた血を洗い流す様に言って、服を一式渡した。
入っていた服は埜々ちゃんの着ているワンピースの色違いで、恐らく埜々ちゃん御用達のブランドものだった。
必ず洗って返すね!と言えば、差し上げます、なんていやいや駄目でしょう!と言うやり取りがあったが、
『妃帥様からは沢山お洋服を貰って、私のは貰ってくれないんですか?』
プーと少し頬を膨らませる埜々ちゃん可愛いぃ…じゃくなくって、そっか他人に着られた服って人によっては着たくないか、
『綴ちゃんが着た服を着たくないって事じゃないです』
『え?口出てた?』
『出てましたよ?』と頬を更に膨らませる埜々ちゃん。
可愛い子がやる拗ねる仕草って、何でキュンキュンするんだ。私がしても実物のタコになる未来しか見えない。
『私だって綴ちゃんとお揃いのもの1つ欲しかったんですけど…』
『はい貰います、貰わせて下さい!』
埜々ちゃんの可愛いさと自然な押しの強さに負けて、服を頂く事になった。(ありがとう…本当にありがとう)



