「もっとムカつくのは、」
マサがポツリと、言葉を溢す。
「あの女と関わり初めてから獅帥の雰囲気が柔らかくなった事」
「っ…!」
自分達が出来なかった事を、軽々とやってのけられた忌々しさと自分達の不甲斐なさにマサは、ギュっと口を閉じた。
獅帥は自分で決めた事を覆す事はない。
覆すとしたら妃帥に言われた時ぐらいで、それ以外は頑として譲らなかった。
なのに、妃帥が身体を壊す度に寝食も忘れて傍にいたあの獅帥が、妃帥の傍から離れさせて、しかも眠らせる事まで出来た。
ーーージリジリと胸の奥で焦げる。
正直洋直より警戒していなかった。
平凡で変哲も無い女。
それが、高嶺の花に触れ様としている。
どうして、なんで、あの子なの?
人には見せられない、醜い自分が顔を覗かせ様とした瞬間ーーー…。
「あ、連絡来てた」
マサの言葉にふと我に帰る。
携帯を操作しているマサに視線を合わせると、
「うそ…」
口を引き攣らせて、連絡された内容に驚いている。
「何よ私にも見せて」
ずいっとマサの視界を遮って見ていた画面を見る。
その内容に「え…」と固まる。
そして、
「…」
「…」
身体を起こしてマサを見る。
お互い苦い顔になっていた。
やってくれたあの男。
「豊起…」
マサも舌打ちし、私は怒鳴りつけたくなった。
「どうするのよこれ」
私の言葉に、誰も返す人は誰もいなかった。



