過つは彼の性、許すは我の心 弐



「もっとムカつくのは、」


 マサがポツリと、言葉を溢す。


「あの女と関わり初めてから獅帥の雰囲気が柔らかくなった事」

「っ…!」


 自分達が出来なかった事を、軽々とやってのけられた忌々しさと自分達の不甲斐なさにマサは、ギュっと口を閉じた。

 獅帥は自分で決めた事を覆す事はない。

 覆すとしたら妃帥に言われた時ぐらいで、それ以外は頑として譲らなかった。

 なのに、妃帥が身体を壊す度に寝食も忘れて傍にいたあの獅帥が、妃帥の傍から離れさせて、しかも眠らせる事まで出来た。


ーーージリジリと胸の奥で焦げる。


 正直洋直より警戒していなかった。

 平凡で変哲も無い女。

 それが、高嶺の花に触れ様としている。

 どうして、なんで、あの子なの?

 人には見せられない、醜い自分が顔を覗かせ様とした瞬間ーーー…。


「あ、連絡来てた」


 マサの言葉にふと我に帰る。

 携帯を操作しているマサに視線を合わせると、


「うそ…」


 口を引き攣らせて、連絡された内容に驚いている。


「何よ私にも見せて」


 ずいっとマサの視界を遮って見ていた画面を見る。

 その内容に「え…」と固まる。

 そして、


「…」

「…」


 身体を起こしてマサを見る。

 お互い苦い顔になっていた。

 やってくれたあの男。


「豊起…」


 マサも舌打ちし、私は怒鳴りつけたくなった。


「どうするのよこれ」


 私の言葉に、誰も返す人は誰もいなかった。