過つは彼の性、許すは我の心 弐




「はあ…」

「はあ…」


 同じタイミングで溜息を吐いてしまうのも無理からぬ事。

 せめて大きな事件になる前に、2人を見つけれればいいのだけれど…。

 そうは言っても楽と同じくらい凡ゆる方面に顔の広い豊起が、私達が近付ける場所にいるとも思えなかった。

 獅帥を客寄せパンダの様に扱い、恥もなくその恩恵に縋り、堕落する姿を楽しむ豊起。

 きっと豊起は、妃帥が危ない状態の事を知っていて、獅帥を連れ回している。

 あの性格が悪く、捻じ曲がった男の事だ。

 獅帥が妃帥を失った時にどんな風になるのか見て見たいのだろう。


「あの女も馬鹿だ」


 唐突にマサが不愉快そうに言った。


「あの女って…綴の事?」

「見ててイライラする。虚言癖の妃帥の事なんか慕って、振り回されて、馬鹿みたい」


 流石に舌打ちまではしなかったが、明らかに嫌悪も露わにしている。

 分からなくは無かった。

 私達の事情も知らない外部の人間だから、好き勝手言えるのだろうけど。


『…じゃあ言うけど、火ノ宮君も清維が思い通りならないのにイラつかないで欲しいし、清維も獅帥君が妃帥ちゃんに構う事にイラつかないでよ。ギスギスしている人と一緒にいるの苦痛』


 何も知らない癖に、妙に見透かした様な事を言って来る。

 私がどんな思いで獅帥の傍に居るかなんて知らない癖して。