過つは彼の性、許すは我の心 弐



「私の馬鹿…」


 振り返っても自分の情けな無さに泣きたくなった。

 手術室近くの椅子で、1人項垂れる。

 私の大馬鹿野郎、こんなの鉄将君達を責められないじゃん。

 でも何て声を掛ければ良かったんだろう。

 獅帥君は何て言っていたんだっけ?獅帥君の願いはーーー…。


「ーーー…綴ちゃん、綴ちゃん、綴ちゃん!」

「へ」


 パッと見上げれば、可愛らしいレースワンピースを着た美少女がいてって、


「埜々ちゃん?」

「良かった…ぼうっとしていたから、具合でも悪いのかと」


 膝に肘を突きながら手に顎を乗せた状態(所謂ロダンポーズ)で、目の前に何故だがいる埜々ちゃんに驚くしか無かった。


「でも顔色が悪そう…」


 可愛らしいリボンでハーフアップにされたボブヘアの黒髪と、クリックリッとした大きな瞳に小さな唇が特徴的な可憐な美少女。

 深窓の令嬢を体現した卯ノ木埜々(うのきのの)ちゃんはサイドの髪を耳に掛けて、私の顔を覗き込でいた。

 
「埜々ちゃんはどうしてここに?」

「私は鉄将君から教えてもらったの」


 チラリと埜々ちゃんが振り向いた先には、鉄将君達がいて、


「唐堂、お前は身なりをどうにかしてこい」

「鉄将君…」


 鉄将君に言われて初めて自分も、獅帥君と同じ様な格好である事を思い出した。