過つは彼の性、許すは我の心 弐



 謳う様に、語りかける様に。

 言葉を紡ぐ妃帥ちゃんは、赤いブレスレットをカーテンから漏れる日に照らす。

 キラキラと光る赤いブレスレットは、少女の手首で踊る様に光る。

 その動きは、王を誘惑せしめんと舞う踊り子の様に見えて、呆然と目を瞬かせるしか出来なかった。


「やっぱりあの人だけは違う」

「…あの、人」

「そう。私が欲しかったモノを、喉から手が出る程欲しかったモノをくれた」

「くれた?」


 視線が私に留まる。

 その瞳は猛禽類を思い出し、何故だか身の危険を感じたが、妃帥ちゃんが私の頬を両手で包み、触れそうな程近づくので思考が途切れた。

 蟲惑的な唇が蠢く。


「運命よこれは」

「運命?」

 
 場の雰囲気に呑まれかけながら、妃帥ちゃんの言葉を反芻する。


「あの人が授けてくれた運命なら、私は受け入れる事が出来る」


 少しの身動ぎで唇が触れ合う距離。

 囁く声は恋人に語り掛ける様に甘い。

 授ける?運命?

 妃帥ちゃんの言っている事が何の事だかさっぱりだし、寝起きだし、最高に今頭は回っていない。

 でも妃帥ちゃんが何をしたいのか。

 漠然とだけど分かる。

 妃帥ちゃんは、


「ねえ綴?貴方を、」


ーーー食べてしまってもいいのかしら?


 私を食べたいんだ。

 吐息が重なった気がした。

 しかしその瞬間、