謳う様に、語りかける様に。
言葉を紡ぐ妃帥ちゃんは、赤いブレスレットをカーテンから漏れる日に照らす。
キラキラと光る赤いブレスレットは、少女の手首で踊る様に光る。
その動きは、王を誘惑せしめんと舞う踊り子の様に見えて、呆然と目を瞬かせるしか出来なかった。
「やっぱりあの人だけは違う」
「…あの、人」
「そう。私が欲しかったモノを、喉から手が出る程欲しかったモノをくれた」
「くれた?」
視線が私に留まる。
その瞳は猛禽類を思い出し、何故だか身の危険を感じたが、妃帥ちゃんが私の頬を両手で包み、触れそうな程近づくので思考が途切れた。
蟲惑的な唇が蠢く。
「運命よこれは」
「運命?」
場の雰囲気に呑まれかけながら、妃帥ちゃんの言葉を反芻する。
「あの人が授けてくれた運命なら、私は受け入れる事が出来る」
少しの身動ぎで唇が触れ合う距離。
囁く声は恋人に語り掛ける様に甘い。
授ける?運命?
妃帥ちゃんの言っている事が何の事だかさっぱりだし、寝起きだし、最高に今頭は回っていない。
でも妃帥ちゃんが何をしたいのか。
漠然とだけど分かる。
妃帥ちゃんは、
「ねえ綴?貴方を、」
ーーー食べてしまってもいいのかしら?
私を食べたいんだ。
吐息が重なった気がした。
しかしその瞬間、



