過つは彼の性、許すは我の心 弐



 唯一自分達を()として愛してくれた人だから、その人の好きな物を好きになった。単純な理由。

 誰よりも自分達の事を考えて、そしてーーー…。


『お前達をこんな目に遭わせるつもりなんて無かったのに…!すまなかった…!』


 誰よりも傷ついた人。


 もっと上手に出来るから、俺出来るから、だから傍にいて。


 そう言った自分に、怒りたい様な、悲しんでいる様な、複雑な表情をしたその人は、自分達を目一杯抱き締めてくれた。

 居なくならないのか、そう思ったのに。

 抱き締めた後、呪いの言葉を吐いて消えた。

 行き先は誰も知らない。父すら知らない。

 分かっているのは、あの人は2度と戻らない事だけ。

 あの人が戻って来るなんて…。


『居なくならないよ』


 自分の手を握ったあの人が傍にいるなんて有り得ない。

 だからこれは夢なんだ。


『大丈夫、起きるまで傍にいるから』


 久々に見る夢は、寝れない夜にずっと傍に居てくれたあの人との一幕。


『おやすみなさい』


 自分を想って言われた言葉には、沢山の慈しみと愛が込められていた。

 あの時が今まで1番眠れていた…けれど。


「(眠い…)」


 温もりを与えてくれる存在がいるせいか、今も微睡に揺蕩う羽目になっている。

 不思議な女。

 あの人とは似つかないのに、何故だが傍にいると安心する事が増えた。