妃帥が周囲に酷く言われるのも、されるのも本意では無い。
誰よりも妃帥が大事だ。
でも、
『あらあら…』
『また吐いてしまって』
『汚い』
『食事はしっかり食べましょうね。食事に《《何が》》入っていても』
『うふふっ…』
口にしてはいけない。
『どうして私は獅帥の妹なの…!?獅帥の妹でなければこんな目には遭わなかった!獅帥なんて…!』
例え片割れに憎まれようとも。
『憎い憎い憎い…!全てが憎い…!私達が何をしたと言うの!?許さない…全てを、私は…』
自分には分からない。
片割れの憎悪の理由を。
自分には理解しようがない。
だって自分はオオミカで、カミサマなのだから。
人の心など理解する必要が無い。
泰然として、人の全てを受け入れていれば良い。
自分がオオミカで居続ければ、妹の願いだって自分は叶えられる。
妃帥が望ま無くても、自分は。
「うん…」
みじろきする声に、現実に引き戻される。
笑ったり、呆れたり、怒ったり、忙しい女。
『好きなモノトークしようよ』
女はそう言うのだ。
彼女曰く、好きなモノを作ると人生が豊かになるらしい。
人生を豊かに?自分に何の得がある?
そう思ったのに、出てきた言葉はりんご。
あの人が好きだった。
『獅帥はりんごが好きなんだね』
控えめにそう笑ったあの人。
違う。
あの人が好きだったから、自分も好きだった。



