過つは彼の性、許すは我の心 弐



 獅帥君が考え込む様な気配を感じて、やってしまったかと思った。

 だって、好きなものすら考え着かないって言ってたぐらいだし、急になんて思いつかないよね。


「あ、でも思いつかなかきゃ別にい、」


 良いよ、と私が言い掛けて、


「月を見ると、穏やかな気持ちになれる」


 そう言った。


「月?」

「ああ」

「狼人間?」

「違う」

「そっか」


 取り敢えず「理由聞いても良い?」と言ってみる。

 今なら何でも答えてくれそうな気がした。


「妃帥と俺を大事にしてくれたから、思い出す」

「…」


 してくれた(・・・・・)からか…誰かの事を言っているのかな。

 普段ならあんまり答えてくれない様な話をしてくれているのかも。

 でも下手に突っ込むと折角聞かせてくれている話をやめてしまうかもしれない。

 ここは相槌を打つのに留めておこう。


「だから俺も妃帥も、辛い時に月を見ると落ち着く」

「そうなんだ」

「どう言う時に見るとそう思うの?」

「…気を紛らわせたい時に見ると、落ち着く」

「へえ…アレだね。あの何だっけ月を見て瞑想するみたいな」

「月輪観だろ」

「そうそう!えーとどうやってやるんだっけ」

「…満月を心に浮かべてそれを広げていき、自分と宇宙が一体となる感覚を養う」

「それだ!」


 寝る前にテンションが上がってしまった。