パニックでとっちらかった脳内が漸く整理されて、いざ獅帥君に聞こうと意気込めば、唐突に手を引かれる。
「し、獅帥君?」
「…妃帥まだ起きてないんだろう?」
「うん」
「まだ俺は眠い」
ズルズルと私を引きづりながら、自身の豪奢なベッドまで歩き、そのままベッドの上に放り投げられた。
「何!?わ、私には妃帥ちゃんって言う超可愛い美少女が!」
「分かった分かった」
「分かったじゃない!うわぶっ」
獅帥君もベッドに乗り上げると、私ごと布団を被せて抱き寄せる。
背後から抱き寄せられて、頭上に獅帥君の気配を感じる。
く、これは…!
「獅帥君!ドキドキするからやめなさい!」
「分かった分かった」
「さっきから分かったしか言ってない!」
「分かった分かった」
「こら!」
「黙らないと妃帥に浮気したって言うぞ」
「うんぐっ…卑怯な!」
私の猛抗議は抱き締める力を強められた事により、黙らざるえなかった。
さっきまで恐怖の一幕があった筈なのに、急にラブコメに方向転換されて身が持たない。
「お前も寝ろ」
「ね、寝れるかいな」
「お前が言ったんだろう。睡眠を取ったお兄ちゃんの方がいいって。だったら、睡眠を取った綴の方が妃帥も良いって言うだろう」
「屁理屈…」
もういいから寝てろと、私がさっき獅帥君にやったみたいにトン…トン…と優しく叩かれる。



