過つは彼の性、許すは我の心 弐


 パニックでとっちらかった脳内が漸く整理されて、いざ獅帥君に聞こうと意気込めば、唐突に手を引かれる。


「し、獅帥君?」

「…妃帥まだ起きてないんだろう?」

「うん」

「まだ俺は眠い」


 ズルズルと私を引きづりながら、自身の豪奢なベッドまで歩き、そのままベッドの上に放り投げられた。


「何!?わ、私には妃帥ちゃんって言う超可愛い美少女が!」

「分かった分かった」

「分かったじゃない!うわぶっ」


 獅帥君もベッドに乗り上げると、私ごと布団を被せて抱き寄せる。

 背後から抱き寄せられて、頭上に獅帥君の気配を感じる。


 く、これは…!


「獅帥君!ドキドキするからやめなさい!」

「分かった分かった」

「さっきから分かったしか言ってない!」

「分かった分かった」

「こら!」

「黙らないと妃帥に浮気したって言うぞ」

「うんぐっ…卑怯な!」


 私の猛抗議は抱き締める力を強められた事により、黙らざるえなかった。

 さっきまで恐怖の一幕があった筈なのに、急にラブコメに方向転換されて身が持たない。


「お前も寝ろ」

「ね、寝れるかいな」

「お前が言ったんだろう。睡眠を取ったお兄ちゃんの方がいいって。だったら、睡眠を取った綴の方が妃帥も良いって言うだろう」

「屁理屈…」


 もういいから寝てろと、私がさっき獅帥君にやったみたいにトン…トン…と優しく叩かれる。