過つは彼の性、許すは我の心 弐



「どうした?」

「ぎゃあっうんぐ!?」


 喧しい口を手で塞がれ、漸く獅帥君が起きた事に気付いた。

 お、起こしちゃったのは悪いけれど、寝起きまで美しい男(私なら目やに付いていたり、寝癖が付いて大変な事になっていただろう)が、音も無く傍にいれば誰だって驚くでしょうが!


「静かにしろ」

「ふがふが!」


 これが落ち着いていられますか!


 と獅帥君に迫る勢いで、ふがふが言いながら伝える。

 いや伝わったのか?と思っていたら、


「誰か来たんだろう」

「ふが!?」


 何で分かったの!?と思ったけれど、よくよく考えて見れば、ドアに私が引っ付いていれば誰か来たと思うのも可笑しくないか。

 獅帥君は私に退く様に言って私が退くと、何の躊躇いも無く、ドアを開けてしまった。


「ちょっと!」

「…」


 私の制止も虚しく、獅帥君は私が恐れたドアの先を見た。


「いない。大丈夫だ」

「え、あ、はそうなの…」


 私が大騒ぎしている間に謎の訪問者は居なくなったらしく、獅帥君は鍵を掛け直し「何もされて無いんだろう?」と言って、私を助け起こす。


「何もされてないけど…獅帥君もしかして、」


 誰かが来る事を分かっていたの?と視線で問い掛ければ、事もなげに「ああ」といつもの無表情で答えた。


 ああ…って。