「どうした?」
「ぎゃあっうんぐ!?」
喧しい口を手で塞がれ、漸く獅帥君が起きた事に気付いた。
お、起こしちゃったのは悪いけれど、寝起きまで美しい男(私なら目やに付いていたり、寝癖が付いて大変な事になっていただろう)が、音も無く傍にいれば誰だって驚くでしょうが!
「静かにしろ」
「ふがふが!」
これが落ち着いていられますか!
と獅帥君に迫る勢いで、ふがふが言いながら伝える。
いや伝わったのか?と思っていたら、
「誰か来たんだろう」
「ふが!?」
何で分かったの!?と思ったけれど、よくよく考えて見れば、ドアに私が引っ付いていれば誰か来たと思うのも可笑しくないか。
獅帥君は私に退く様に言って私が退くと、何の躊躇いも無く、ドアを開けてしまった。
「ちょっと!」
「…」
私の制止も虚しく、獅帥君は私が恐れたドアの先を見た。
「いない。大丈夫だ」
「え、あ、はそうなの…」
私が大騒ぎしている間に謎の訪問者は居なくなったらしく、獅帥君は鍵を掛け直し「何もされて無いんだろう?」と言って、私を助け起こす。
「何もされてないけど…獅帥君もしかして、」
誰かが来る事を分かっていたの?と視線で問い掛ければ、事もなげに「ああ」といつもの無表情で答えた。
ああ…って。



