『匡獅様達にとっては、いつもの事なんですよ』
『…』
『こう言ってはなんですが、妃帥様が危篤になっても来られないでしょうね』
圭三郎さんは仕方ないと言わんばかりに首を振った。
て言うか、獅帥君達のお母さんはどうしたの。
匡獅さんには会えたれど、お母さんについては何の情報もない。
ここに来てから色んな人と話したけれど、お母さんの話が出ないのってなんか変な様な。
それとも色々起こり過ぎて、私が神経質になっているだけ?
もし私の神経質じゃなかったら?
話にも上がらないって事はまさか…。
嫌な考えが頭を支配した時、コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
「はい?」
ドアが続き部屋の方ではなく、外からだからカズミさんでも、妃帥ちゃんでもない。
「凌久君?」
ノック音の主は答えない。
一応携帯から連絡だけはしていたから、余程の事が無い限り凌久君も来ないだろうし。
ドアの前で歩いて「あの」と言ってみるが、返事がない。でも立ち去る気配が無いし、一体どう言うつもりなんだ。
獅帥君の部屋だから勝手にドアを開ける事も出来ないしなあ、せめて誰か分かればと思ってふと…鍵穴に目が行く。
アンティーク仕様のドアだから鍵穴も少し大きく、やろうと思えば彼方も見えそうな気がする。
………ちょっと覗いてみるか。



