気分が良かった。
「ふんふーん…」
窓辺で頰杖をつきながら、夕暮れに染まりつつある空を眺めて鼻歌を歌う。
主よ人の望みの喜びよ。
私が鼻歌にするには皮肉かしら。
「…随分機嫌が良いですね」
「ふふっ…そうね。ドブネズミを引き入れられた事は苛ついたけれど、それがあっても帳消しね」
「…」
決してあり得ないと思っていたのに。
『綴に対してこんな身勝手な気持ちを抱いてしまうのは可笑しいよな』
獅帥があんな事を言うんですもの。
あの時は喜びをひた隠しにするのが大変だった。
それでも自身の醜悪さを隠す為に、聖母の微笑みで兄を導いたのだから褒めて欲しいものね。
『いいのよ獅帥。貴方にも自我が芽生えたって事なんだから。貴方の人らしい感情を齎すその相手が、私の綴なら尚良いわ』
『…』
『ふふ…大丈夫よ。綴は貴方が我儘を沢山言ったからと言って、嫌いにならないわ』
いや誘導したのかしら。
「彼女をどうするんですか」
「ーーーどうしたの 」
振り返って態とそう呼ぶと神経質そうに眉を顰める。
もうその名前を呼ぶのは私だけ。
あの時から。
「ーーー貴方なんだかんだ綴を気に入っているものね」
「…」
嫌な記憶が思い浮かびそうになって、掻き消す様に図星を突いて怒らせる様に仕向けた。



