円嘉の事も、喜影君の事も何処か間違えたんだ。
私は彼等にこんな事をされても仕方ない。どんな関係もどっちかが100%悪いなんて中々無いけれど、2人の事はきっと私に何か非があったんだと思う様になっていった。
幾ら考えても分からないし、聞いて答えてくれる人達でもなかったから胸の中のモヤモヤは増すばかりで、そんな中で立て続けに悪い事が起きてしまって、心が折れそうだった。
吃りながらそう思いの丈を伝える私に、
「どうして、何だろうな」
吐き出す様に獅帥君が言った。
とても苦しそうに言う獅帥君に、涙が引っ込んで逆に心配になる。
「獅帥君、」
私の呼び掛けに、
「俺が、大事にされて欲しいと思った相手は、いつも辛い目に遭う」
一杯一杯と言った風に答えた。
そっか。
獅帥君からすれば、妃帥ちゃんは周囲から随分酷い目に遭わされていたと聞くし、それこそ獅帥君のお母さんだって…。
「獅帥君、私」
「お前は大事にされるべきだ」
そう言って獅帥君の顔が近付き、私の目尻に残る涙を熟れた柘榴の様な唇で掬う。
動物が傷付いた仲間の傷を舐める様なその仕草に擽ったくて小さく笑ってしまった。
でも笑っていられたのはここまでで、
「この跡だって」
私に残る暴虐の跡に触れられて状況が変わった。



