過つは彼の性、許すは我の心 弐



 化け物って御伽話の話なのか、それこそ本当に揶揄っているのか、それとも…。


「気付いていないんだな」

「いい加減に、」


 帷有墨が声を荒げる一瞬前に、


「ーーーそこに居るぞ」


 獅帥君の言葉にゾクッとした。

 その言葉と共に鉄将君の肩越しに、帷有墨の背後から腕が2本伸びてガッと首に巻き付く。


「ナ、んだ!グッ…!」


 ヒッと声を呑む。

 後ろに倒れ込んだのは見えたが、それからは鉄将君の背中しか見えなかったので、帷有墨の抵抗する声と音しか聞こえない。次第に聞こえなくなって、より恐ろしくなった。

 遠くで文化祭の賑わいしか聞こえなくなり、白昼にお化けが出るのかと震えていたら、


「惣倉、綴が怯えている」


 え、と思っていれば、鉄将君が前から退いた。


「先輩、遅くなりました」

「つ、惣倉君!」


 いつもの中等部の制服を着た可愛い後輩が手を振ってくれているが、下には失神している帷有墨がいて目を丸くする。


「先輩ごめんなさい、コイツに色々されたんでしょう。非常時にこんな馬鹿な事をする奴いないと思ったんです油断しました」


 惣倉君は近付いて私をチラリと見た後、羽織を更に被せた。


「ぶ」

「先輩刺激的な格好にされて、それに」


 私の指先を見て痛々しそうに眉を顰めた。