過つは彼の性、許すは我の心 弐



「ーーー何でなんだよ!!」

「ッ!」


 ゴーン!!良い音が鳴った。

 私の頭が男の顎に炸裂し、男は後ろに手を付く。

 今だ!!

 ビリビリになった服を前で掴みながら立ち上がった。

 男の後ろにある扉に猛ダッシュする。


「て、メエ…!」

「っ!」


 目が回っているのか自由に動けないらしく、スカートにナイフを突き立て様とするが、既の所で引っ張って回避。

 室外へと出る事は成功したけれど、


「いっ…!」


 走り出そうとすると左の足首に痛みが走る。

 左足首が痛い、多分捻挫してるこれ。あちこちで床に放り出されまくったからだ。

 でも、


「逃げなきゃ…!」


 足を引きずりながら走る。

 世界の破滅が迫っている様な緊迫感があるのに、足は言う事を聞かないのがもどかしい。

 もう少し早く、と廊下の角まで歩いた所で、


「待てやクソ女アアアアァアア!!」


 雄叫びと共に扉を開けた音が聞こえた。

 駄目だ殺される。

 廊下の角に手を掛けて、もう一度痛くても足に力を入れようとした。

 するとーーー。


「きゃ」


 廊下の角の先にいた誰かとぶつかった。

 倒れる!?

 足に踏ん張りが付かずに倒れそうになって、ぽふり。

 抱き止められて、甘くて良い匂いが鼻腔を擽ぐる。何かが込み上げる。

 眩しい。


「し、すい君」

「綴っ!」


 折角綺麗にして貰ったのに絶対酷い。こんなじゃ惣倉君にも会えない。