過つは彼の性、許すは我の心 弐



 頷いた洋直ちゃんは突然、


「私一度誘拐されかけたんです」


 穏やかではない言葉を使った。


「ゆ、誘拐?」


 洋直ちゃんは頷いて、


「…今思えば海祇の関係者の人だったのかもしれないんですけど、誘拐しようとした人達に『子を連れ去るこの行いを兄が認めたと言うなら、私の命を持って行けばいい』って、お母さんたった1人しかいなかったのに、誘拐犯達がたじろぐ様な威圧感で…私はその後に来たお父さん達に助けられた後、沢山泣いてこの事を忘れてしまったんです、でも…」


 言葉を切る。

 更に、
 

「あの時戻って来た海祇先輩に私に謝ってくれて『俺はアンタがミサさんの子供と知ったからには助けたいし、守ってやりたい。困ったら何でも言え。必ず助ける』って言ってくれたんです。その時2人が私を見る目が、守ってくれたお母さんの力強い瞳にそっくりだったんです」


 と言って「当然ですよね血の繋がった家族なんですから」と笑った。


「お母さんと一緒の目を持つ2人が羨ましい…そう思ったんです」

「…」


 ミサさんを夏波ちゃんでなんとなく想像したら納得した。

 あの強く凛とした瞳で睨まれれば、存在感に相手は慄くだろうが、ただ夏波ちゃん1人を戦わせるなんて渚君が黙っていると考えられないけれど。


 洋直ちゃんは「それに、」と話を続けた。